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感想:『夜と霧』

夜と霧

原題を直訳すると「心理学者、強制収容所を体験する」。

私が体験した…というか現在進行形で体験している状況と著者の体験の壮絶さはもちろん比べるべくもないのだが、「人生の本当に辛い時期をどう過ごすべきか」というメッセージ、という観点で読んだ。

印象に残っているのは、被収容者の中に一部収容所生活を通じて内面的に深まっていくことができる人がいたということ、収容所での生活において正気を保つためには未来に目的を持つことが大切であったということ、そして、自分のポケットマネーから被収容者のための薬を買って来させていたSS隊員を解放後にユダヤ人たちがアメリカ軍からかばったという話。

辛い経験の中には安穏と生きていたら決して学べないことがたくさんある。そこで目の前の苦しみから逃げてしまうか、目下の自分のありようを真摯に受け止めて自分を高めていけるかは自分次第なのだと思う。

著者は、いつか自分が解放されて「強制収容所の心理学」について立派なホールで講演している姿を想像することで精神崩壊せずにいられたという。逆に希望を失った人たちは正気を失って死んでいったとか。今の私も「もう半年もすれば今の悩みにはすべて決着がついている」と考えると元気が湧いてくる気がする。また「自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない」ということで、やり残した仕事がある研究者や小さい子供を残してきた父親は、それが生き抜く力になったとか。著者も奥さんの存在が支えになっていたとのことだが、その奥さんは別の収容所で亡くなってしまったそうだ。

他の被収容者に暴力を振るう被収容者もいれば、パンや薬をくれた収容所の所長や現場監督もいた。「この世にはふたつの人間がいる、いや、ふたつの種族しかいない、まともな人間とまともではない人間と、ということを(余談だがこの一言は映画『マイ・ネーム・イズ・ハーン』の主人公の母親の台詞の元ネタだと思う…多分)」「まともな人間だけの集団も、まともではない人間だけの集団もない」どこでどんな人と接するときも心に留めておきたい言葉。

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感想:『無人島に生きる十六人』

無人島に生きる十六人

今からおよそ120年前、船が難破してミッドウェー島沖の無人島に流れ着いた16人の日本人船員が、数ヵ月サバイバル生活を送ったという信じられない実話。

着る服もない、食べ物も限られる、飲み水もほとんどない島で、16人の男たちは知恵と工夫を重ねて命をつないでいく。

私が感銘を受けたのは、彼らの生活力、前向きさ、そして向学心。

自分で蒸留水の製造装置を作る。帆布をほぐして出た糸で漁網を作る。木をこすりあわせて火を起こし、海亀の脂を使ったカンテラに灯して万年灯にする。努力せずとも何でも手に入る現代人にはとてもできそうにない。

無人島に流れ着いて島で亡くなってしまう人は、自分はもう故郷に帰れない、と絶望したことが原因ではないか、ということで、島で手に入るものだけで生活し、言ってもしょうがないことは言わない、規律正しく、努めて明るく生活するというルールのもと、彼らはあくまで前向きに無人島生活を送る。おどろくべきことに、本の中で1回も内輪揉めや喧嘩があったという記述がない。こういうストレスフルな条件で共同生活をすると必ず揉め事が発生するものだと思っていたが、彼らは違う。船長が「おこらないこと、そしてしかったり、こごとをいったりしないこと」を心がけたのも大きかったのかもしれない。

「ただ無人島で生活しているだけではアザラシと変わらない。日本人としてお国のためになるようにたくさん勉強しなくては」と言って、学科の時間を取って航海術や日本語の読み書き、英語(小笠原の帰化人がいたため)などを勉強する。無事日本に帰国する頃には、読み書きがおぼつかなかった船員が立派な手紙を書けるようになっていたり、逓信省の船舶職員試験に受かった者が出たりしたというから驚く。私だったら無人島に漂着したら食べて寝て遊んでばかりだろう(笑)

とにかくこの本に描かれた当時の日本人のバイタリティーと勤勉さには今の日本人が学ぶべきところがたくさんあると思う。

元は戦前に子供の読み物として書かれたものらしいので、平易な文章ですらすら読める。

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感想:『移行化石の発見』

移行化石の発見

進化の途中の段階にある生物の化石「移行化石」の例を挙げながら、生物は枝分かれと絶滅を繰り返しながら進化してきたことを示した科学読み物。

鳥と恐竜のつながりを示す化石の存在や、ヒトの仲間は様々に分岐しながら進化を遂げ、最後に生き残った種が現生人類であることはそれぞれ知識として知っていたが、それらをまとめて示されると、ダーウィンが『種の起源』の中でその存在が確認されていないことに対して苦しい言い訳をしていた移行化石がこんなにたくさん…と感慨深い思いになる。

著者は進化論を信じない人たちにロジカルに進化論の正しさを説明する目的でこの本を書いたらしい。アメリカでは進化論を信じている人は40%しかいないんだとか。

私は漠然と進化論を正しいものとして信じているが、それゆえに人から「進化論は生物学の学説史の中でどういう位置付けなのか?」と訊かれてうまく答えられなかったことがある。そんなときのために、生物が進化してきた証拠となる化石や分子生物学・発生学のデータを体系的に示したこの本を読んでいればもう少しまともな答えが出せたと思う。

また、様々な移行化石が発見されて進化の道筋が埋まっていく様子はまるで上質のミステリーを読んでいるようで、純粋に読み物として面白い。(個々の研究者がどうしたこうした、という話がちょっと長ったらしいが)

特に私がワクワクしたのは恐竜と鳥の話とクジラの話と人類の進化の歴史の話。鳥は早い話が恐竜の生き残りであるという話はいつ聞いてもロマンがある。(そういえばさっき食べた鶏のレバーも、あれは恐竜の肝臓だと考えることができる)クジラがカバに近い動物から進化したという話は内心ちょっと疑っていたが、クジラの特徴を持つ最古の動物の骨格はものの見事に偶蹄目で驚いた。私たちホモ・サピエンスが、多様に分化したヒトの仲間の最後の生き残りだと思うと考えさせられる。

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感想:『伝わる・揺さぶる!文章を書く』

伝わる・揺さぶる!文章を書く

著者の名前がとても怪しいので警戒していたが、とても骨太な文章術の本。

「相手の立場に立って考える」「論点はどこなのか意識する」など、当たり前かなと思う内容から、「説得するときは相手に反対理由を聞いてみる」「細かい問いを繰り返して自分の言いたいことをはっきりさせる」「自分の根本思想に忠実であること」など、言われてみれば確かにそうだが見落としていたところまで、文章を書く際の様々な方法論が書かれている。とてもすべては覚え切れないので、文章を書くときはこの本に首っ引きになりそうだ。

そうそう、と思ったのは「根本思想はごまかせない」ということ。「根本思想」というのは自分の言うことの背後にある自分の価値観・思いのこと。確かに底意地の悪い人の文章はやっぱり底意地が悪いし、優しい人の文章は優しい、というのは前々から感じていたので、とても共感できた。

ドキッとしたのは「お詫びの文章がテンプレート通りで心からのお詫びが伝わらないものになっていないか?」という事例と「思考停止ポイントの発見」。
お詫びの文章についてはいつもビジネス文書のテンプレ通りに書いてしまったので、相手の立場を想像したり自分の思いを書いたりしなくてはと思った。
思考停止ポイントについては、ジョジョラー仲間が「荒木先生がこう言っていたからこうだ」と言ったとき何とも言えずモヤッとしたのは、その人が他のジョジョラーの「荒木先生がこう言ったから正しい」という思考停止ポイントを巧みに利用しているように感じた(あるいは彼女自身もそこで思考停止していたのかもしれない)からかもしれない、とこの本を読んで気づいた。

入試にも就活にもビジネスにも使える文章術がつまった本書。おすすめです。

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感想:『ライフ・レッスン』

ライフ・レッスン

終末期医療のパイオニア、エリザベス・キューブラー・ロス博士と、その盟友、デーヴィッド・ケスラー氏が語る、本来の自分を生きるための15のレッスン。

本書の中で繰り返し語られるのは、本来の自分の貴重さを自覚し、自分を慈しむこと、「今、この瞬間」を生きることを大切にすること、大いなる存在に身をゆだねること。考え方がキリスト教的な方向に偏っているのが非クリスチャンの日本人としてはちょっと気になったが(「死の床にある人の多くは人間を無条件に愛し、罪のある人間をみとめる神をみいだしている」←そうか?もっと冷徹な荒ぶる神を信じている宗教だってあるぜ?)良い気づきを得られる言葉がたくさんあった。なるほどこういうことを知っていれば『イワン・イリイチの死』の主人公のように死の間際に苦悩することもないかもしれない。

私が特に気になったくだりは以下の通り。

・子供の頃身に付けた防衛機制を手放す必要性

・私たちが人生で経験する愛のほとんどには厳しい条件がついているということ

・ただそばにいるだけの愛について

・人間関係に間違いというものはなく、むしろ「困った人」「つまらない人」が最高の師になりうるということ

・喪失体験のない成長はありえないということ

・他者・もの・出来事をコントロールすることは不可能だということ

・「もっと、もっと」と思うことをやめて、「もう足りている」と自覚すること

・罪悪感を手放すには、人にしゃべってしまうのがいいということ

・「ひとつのドアが閉まっていても、べつのドアはかならずあいている…でも、それぞれのドアにつうじる廊下にいるときが、いちばんつらい」

・過去や未来を手放し、現在を十分に堪能するということ

・人生において恐れていることが起こる確率は低いということ

・怒りの背後には恐れが隠れているということ

・怒りを感じたときにはその場で「怒っている」と口に出して言うこと

・死を前にした人たちが一番後悔するのは「あんなにまじめに生きることはなかった」ということだということ。休日も夜も返上して仕事をしている人は自分には遊びの時間が足りないのではないかと考えた方がいいということ(大方の日本人はちょっと考えた方がいいのかも)

・忍耐を養うためには、何かを調整したい、変えたいという欲求を手放し、大いなるものの力ですべてはいずれうまくいくと信じること

・「変えられないことを従容としてうけ入れるゆとりと、変えられることを変える勇気と、そのちがいを知る知恵」

・「相手は過ちを犯したが、それは相手の本来の状態でなかった。人間である以上、相手も過ちを犯す。そのことで相手も傷ついている。そこに気づいたとき、許しが生まれる」

・誰かと比較することなく、過去の自分や未来のこうあってほしい自分と照らし合わせたりすることもなく、いまここで、ありのままの自分をよしとすることが幸福の始まりであるということ

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