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感想:『無人島に生きる十六人』

無人島に生きる十六人

今からおよそ120年前、船が難破してミッドウェー島沖の無人島に流れ着いた16人の日本人船員が、数ヵ月サバイバル生活を送ったという信じられない実話。

着る服もない、食べ物も限られる、飲み水もほとんどない島で、16人の男たちは知恵と工夫を重ねて命をつないでいく。

私が感銘を受けたのは、彼らの生活力、前向きさ、そして向学心。

自分で蒸留水の製造装置を作る。帆布をほぐして出た糸で漁網を作る。木をこすりあわせて火を起こし、海亀の脂を使ったカンテラに灯して万年灯にする。努力せずとも何でも手に入る現代人にはとてもできそうにない。

無人島に流れ着いて島で亡くなってしまう人は、自分はもう故郷に帰れない、と絶望したことが原因ではないか、ということで、島で手に入るものだけで生活し、言ってもしょうがないことは言わない、規律正しく、努めて明るく生活するというルールのもと、彼らはあくまで前向きに無人島生活を送る。おどろくべきことに、本の中で1回も内輪揉めや喧嘩があったという記述がない。こういうストレスフルな条件で共同生活をすると必ず揉め事が発生するものだと思っていたが、彼らは違う。船長が「おこらないこと、そしてしかったり、こごとをいったりしないこと」を心がけたのも大きかったのかもしれない。

「ただ無人島で生活しているだけではアザラシと変わらない。日本人としてお国のためになるようにたくさん勉強しなくては」と言って、学科の時間を取って航海術や日本語の読み書き、英語(小笠原の帰化人がいたため)などを勉強する。無事日本に帰国する頃には、読み書きがおぼつかなかった船員が立派な手紙を書けるようになっていたり、逓信省の船舶職員試験に受かった者が出たりしたというから驚く。私だったら無人島に漂着したら食べて寝て遊んでばかりだろう(笑)

とにかくこの本に描かれた当時の日本人のバイタリティーと勤勉さには今の日本人が学ぶべきところがたくさんあると思う。

元は戦前に子供の読み物として書かれたものらしいので、平易な文章ですらすら読める。

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感想:『移行化石の発見』

移行化石の発見

進化の途中の段階にある生物の化石「移行化石」の例を挙げながら、生物は枝分かれと絶滅を繰り返しながら進化してきたことを示した科学読み物。

鳥と恐竜のつながりを示す化石の存在や、ヒトの仲間は様々に分岐しながら進化を遂げ、最後に生き残った種が現生人類であることはそれぞれ知識として知っていたが、それらをまとめて示されると、ダーウィンが『種の起源』の中でその存在が確認されていないことに対して苦しい言い訳をしていた移行化石がこんなにたくさん…と感慨深い思いになる。

著者は進化論を信じない人たちにロジカルに進化論の正しさを説明する目的でこの本を書いたらしい。アメリカでは進化論を信じている人は40%しかいないんだとか。

私は漠然と進化論を正しいものとして信じているが、それゆえに人から「進化論は生物学の学説史の中でどういう位置付けなのか?」と訊かれてうまく答えられなかったことがある。そんなときのために、生物が進化してきた証拠となる化石や分子生物学・発生学のデータを体系的に示したこの本を読んでいればもう少しまともな答えが出せたと思う。

また、様々な移行化石が発見されて進化の道筋が埋まっていく様子はまるで上質のミステリーを読んでいるようで、純粋に読み物として面白い。(個々の研究者がどうしたこうした、という話がちょっと長ったらしいが)

特に私がワクワクしたのは恐竜と鳥の話とクジラの話と人類の進化の歴史の話。鳥は早い話が恐竜の生き残りであるという話はいつ聞いてもロマンがある。(そういえばさっき食べた鶏のレバーも、あれは恐竜の肝臓だと考えることができる)クジラがカバに近い動物から進化したという話は内心ちょっと疑っていたが、クジラの特徴を持つ最古の動物の骨格はものの見事に偶蹄目で驚いた。私たちホモ・サピエンスが、多様に分化したヒトの仲間の最後の生き残りだと思うと考えさせられる。

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感想:『伝わる・揺さぶる!文章を書く』

伝わる・揺さぶる!文章を書く

著者の名前がとても怪しいので警戒していたが、とても骨太な文章術の本。

「相手の立場に立って考える」「論点はどこなのか意識する」など、当たり前かなと思う内容から、「説得するときは相手に反対理由を聞いてみる」「細かい問いを繰り返して自分の言いたいことをはっきりさせる」「自分の根本思想に忠実であること」など、言われてみれば確かにそうだが見落としていたところまで、文章を書く際の様々な方法論が書かれている。とてもすべては覚え切れないので、文章を書くときはこの本に首っ引きになりそうだ。

そうそう、と思ったのは「根本思想はごまかせない」ということ。「根本思想」というのは自分の言うことの背後にある自分の価値観・思いのこと。確かに底意地の悪い人の文章はやっぱり底意地が悪いし、優しい人の文章は優しい、というのは前々から感じていたので、とても共感できた。

ドキッとしたのは「お詫びの文章がテンプレート通りで心からのお詫びが伝わらないものになっていないか?」という事例と「思考停止ポイントの発見」。
お詫びの文章についてはいつもビジネス文書のテンプレ通りに書いてしまったので、相手の立場を想像したり自分の思いを書いたりしなくてはと思った。
思考停止ポイントについては、ジョジョラー仲間が「荒木先生がこう言っていたからこうだ」と言ったとき何とも言えずモヤッとしたのは、その人が他のジョジョラーの「荒木先生がこう言ったから正しい」という思考停止ポイントを巧みに利用しているように感じた(あるいは彼女自身もそこで思考停止していたのかもしれない)からかもしれない、とこの本を読んで気づいた。

入試にも就活にもビジネスにも使える文章術がつまった本書。おすすめです。

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Facebookをいったんやめてみて思うこと

Facebookのアカウントを停止した。

理由は、高校の同級生のリア充ぶりを見るのにうんざりしたから。

タイムラインや友人の友人の表示にずらずら並ぶ、ウェディングドレスや色打ち掛けをまとった写真。人によっては赤ちゃんを抱いた写真。仕事の順調さをうかがわせる書き込み。海外在住で英語が達者な子のネイティブそこのけの英語の書き込み。本当はみんなが公私共に充実しているのを祝福してあげるべきなのかもしれないが、どうにも心穏やかになれなくて、アカウントの凍結に踏み切った。

でも、胸に手を当てて考えてみると、私も海外の友人とのやり取りや外国で撮った写真をよくFacebookに載せていたし、結婚するかも知れない彼氏の存在も明らかにしていた。彼氏のことを人に言ったのは、「非モテ扱い、行き遅れ扱いされたくない」という私のコンプレックスの現れでもあった。外国の写真などについても、「グローバルに活躍する私」を喧伝したい気持ちが裏になかったと言ったら嘘になる。

結婚式の写真や英語の書き込みにイラッとくるのも、人に海外に行ったことや彼氏のことを言いたくなるのも、実は全部根っこは同じ、私のコンプレックスからくるのではないだろうか?そして自分のコンプレックスが知らず知らず他人に迷惑をかけていないか考えるべきではないだろうか?

人を見ていてイライラすることは、ひょっとしたら自分が他人をイライラさせていることの裏返しかもしれない。

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感想:『種の起源』

とうとう読みました『種の起源』。

まさか遺伝子という概念も、もちろんDNAも知らないダーウィンが、ここまで高度な議論に到達できていたとは思わなかった。自然選択や生存競争、ニッチの分化など基本的なことから、基本ニッチと実現ニッチ、別々の形質が必ず同時に現れる法則(同じ遺伝子が関わっている)、生物学的種概念の原型など、大学レベルかそれ以上のことまで、詳細な観察と実験を元に記述している。「西洋哲学とはプラトンへの膨大な注釈である」と言った哲学者がいたそうだが、現在のマクロ系生物学もダーウィンへの膨大な注釈と言えるかもしれない。

とはいえ、日本では割りとすんなり受け入れられている進化論も、アメリカなどでは依然として反対する勢力がある。解説で、日本のアニミズム的な文化が、人間は特別な存在ではなく他の生物と同様に進化してきたという思想を受け入れる土壌を作ったと解説に書かれていたのが興味深い。

他の進化を扱った読み物を読むと、ダーウィン以後どんな風に「ダーウィンへの注釈」が増やされていったか分かって面白い。

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