まんざらでもない瞬間
感想:『ライフ・レッスン』
終末期医療のパイオニア、エリザベス・キューブラー・ロス博士と、その盟友、デーヴィッド・ケスラー氏が語る、本来の自分を生きるための15のレッスン。
本書の中で繰り返し語られるのは、本来の自分の貴重さを自覚し、自分を慈しむこと、「今、この瞬間」を生きることを大切にすること、大いなる存在に身をゆだねること。考え方がキリスト教的な方向に偏っているのが非クリスチャンの日本人としてはちょっと気になったが(「死の床にある人の多くは人間を無条件に愛し、罪のある人間をみとめる神をみいだしている」←そうか?もっと冷徹な荒ぶる神を信じている宗教だってあるぜ?)良い気づきを得られる言葉がたくさんあった。なるほどこういうことを知っていれば『イワン・イリイチの死』の主人公のように死の間際に苦悩することもないかもしれない。
私が特に気になったくだりは以下の通り。
・子供の頃身に付けた防衛機制を手放す必要性
・私たちが人生で経験する愛のほとんどには厳しい条件がついているということ
・ただそばにいるだけの愛について
・人間関係に間違いというものはなく、むしろ「困った人」「つまらない人」が最高の師になりうるということ
・喪失体験のない成長はありえないということ
・他者・もの・出来事をコントロールすることは不可能だということ
・「もっと、もっと」と思うことをやめて、「もう足りている」と自覚すること
・罪悪感を手放すには、人にしゃべってしまうのがいいということ
・「ひとつのドアが閉まっていても、べつのドアはかならずあいている…でも、それぞれのドアにつうじる廊下にいるときが、いちばんつらい」
・過去や未来を手放し、現在を十分に堪能するということ
・人生において恐れていることが起こる確率は低いということ
・怒りの背後には恐れが隠れているということ
・怒りを感じたときにはその場で「怒っている」と口に出して言うこと
・死を前にした人たちが一番後悔するのは「あんなにまじめに生きることはなかった」ということだということ。休日も夜も返上して仕事をしている人は自分には遊びの時間が足りないのではないかと考えた方がいいということ(大方の日本人はちょっと考えた方がいいのかも)
・忍耐を養うためには、何かを調整したい、変えたいという欲求を手放し、大いなるものの力ですべてはいずれうまくいくと信じること
・「変えられないことを従容としてうけ入れるゆとりと、変えられることを変える勇気と、そのちがいを知る知恵」
・「相手は過ちを犯したが、それは相手の本来の状態でなかった。人間である以上、相手も過ちを犯す。そのことで相手も傷ついている。そこに気づいたとき、許しが生まれる」
・誰かと比較することなく、過去の自分や未来のこうあってほしい自分と照らし合わせたりすることもなく、いまここで、ありのままの自分をよしとすることが幸福の始まりであるということ
不安を消す方法
その中に「心の中から悩みを追い出す方法」という章があり、気になって読んでみたら、「悩みは忙しくしていれば消える」と書かれていてハッとした。
今までやたら不安で鬱的になったら休んだ方がいい、と聞かされていたが、考えてみたらある程度忙しいときの方が確かに調子が良かった。(一歩も家から出ないときなんて最悪)
本を読んでいると悩みが軽くなる気がするのも、ネットサーフィンをしていたりただごろごろしたりしているときより脳が忙しく働いているからかもしれない。
この本には他にも「明日のことは明日自らが思い悩む」という話や、「砂時計の砂が落ちるように、ゆっくりと一定の速度で仕事を続ける」という話など、ためになる話がたくさん書かれているので、楽しく読み進めようと思う。
スランプを乗り切る方法
そんなときでもサボるわけにはいかない。しかし体が動かない。
そういうときはやることを細切れにして実行する。
「この作業終わったらお茶でも飲もう」「この書類作り終わったら散歩に行こう」そんなことを考えてだましだまし仕事を進める。
「スランプも3年続けば実力」と羽生名人の言葉にあった。そうならないために、スランプの中でもある程度の結果を出す方法を身に付けたいものだ。
感想:『読めば身につく!これが最後のワイン入門』
「これが最後の…」と銘打ってあるだけあって、赤ワイン・白ワイン・スパークリングワインの製法の違いから、世界の主要なワインの産地とブドウの品種の紹介、ワインの買い方など、本当に初歩の初歩から丁寧に解説がしてあって、これなら何も考えずワインを飲んでいた私のような人間でも理解できる。ただ、「何を食べてもうまいと言う」大ざっぱな味覚の持ち主なので、細かい味や香りの違いの話となると分かるかどうか難しいところだが…。
普段カルディで買った1本一千円するかしないかのワインを飲んでいる私でも実践できそうだった項目は以下の通り。
○ワインの選び方・買い方
・これはいいな、と思ったワインの名前をメモして自分で買い、リピーターになる
○ワインを飲むとき
・普通に買えるワインの9割は買ってすぐ飲んで美味しいように出来ている
○お店でワインを頼むとき
○ワインの産地
感想:『心を癒やす言葉の花束』
上智大学名誉教授、アルフォンス・デーケン氏が、先人の残した40の名言について自らの体験を交えて語った本。
辛いとき癒やしをくれる言葉、迷ったときの道しるべになってくれる言葉、自分の心の弱さに気づかせてくれる言葉、そんな言葉たちが詰まった本。私はキリスト教主義の学校で教育を受けたので、カトリックの司祭でもあるデーケン氏のキリスト者らしい言葉に昔を思い出して懐かしさでいっぱいになった。
特に私の琴線に触れた言葉はこちら:
「わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを」(聖書)
「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」(聖書)
どちらも昔大好きだった聖書の一節。特に後者は「JINの『神は乗り越えられる試練しか与えない』って確か聖書が元ネタだったよな…私の思い違いかな…」とモヤモヤしていたので、この本で確認できて良かった。
「顔を隠すな、ぞんぶんに泣け、捌け口を鎖された悲しみが、うちに溢れれば、ついには胸も張裂けよう」(シェークスピア『マクベス』)
この言葉を、失恋した友人に贈ります。
「暗闇の中でも、小さくてもいいから、光を探しなさい」(デーケン氏のご両親)
「人は出会うすべての人から学ぶことができる。こうありたい姿と、こうありたくない姿と、だ」(デーケン氏のお父様)
どちらも含蓄のある言葉。さすがデーケン氏のご両親。絶望の淵に沈みそうなとき、嫌な奴に出会ってしまったとき、思い出すことだろう。
「相手のありのままを認めようとせず、相手に自分の理想を押しつけ、あれこれ条件を課すのは、依存心の表れであり、その人自身が自立していない証拠です」(デーケン氏)
その通り。親子関係にも恋愛にも適用できそうな言葉。
「『命令されたから』『みんながやっていたから』『法律だから』とは、責任ある大人の言葉ではない」(デーケン氏)
自分のしたことに言い逃れをするナチスの戦犯に対するデーケン氏の辛辣な言葉。デーケン氏の祖父はドイツが降伏した時に進駐してきた連合軍の兵士に射殺されているとか。当時を知る人の言葉は重い。
「驚きは哲学の始まり」(プラトン)
科学や哲学の核心を突いた、2400年経っても全く古さを感じさせない一言。「西洋哲学の歴史とはプラトンへの膨大な注釈である」と言われるのもむべなるかな。そういえば今読んでいる途中の『種の起源』も、元はといえば南米を旅したダーウィンの驚きから始まったものだった。
「自分の力だけではどうにもならないという限界を知ることは、真の人間的な強さに近づく第一歩」(デーケン氏)
中高の部活で山に登っていた頃、山に行くといつも人間の力は何てちっぽけなものだろうと感じていた。ちなみにその部では山に行くと毎回(合宿中は毎朝)礼拝をする習慣があり、それがクリスチャンの登山者の方との会話のきっかけになったこともあった。
「恐怖は、蛇や病気など何かはっきりした原因があって生じるものであり、一方不安は、漠然とした気分のようなつかみどころのないもの」(デーケン氏、元ネタはキルケゴール)
恐怖と不安の違いを見事に説明した一言。なるほど。
「お香典返しの代わりに、ホスピスに寄付したらいかがでしょう」(デーケン氏)
なるほど。いいアイデアかもしれませんが残された人たちが賛成するかどうかが問題で…。
「もし一人の人間によって少しでも多くの愛と平和、光と真実が世にもたらされたなら、その一生には意味があったのである」(アルフレート・デルプ神父)
私は人の生きる意味はこれなんじゃないかと思っている。
「自分を待っている仕事や愛する人間に対する責任を自覚した人間は、生きることから降りられない」(ヴィクトール・E・フランクル)
私も自分が死んだら彼氏の人生設計がめちゃくちゃになると考えたら死ねなくなった。
「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」(ニーチェ)
そういえばニーチェの「永劫回帰」の考え方がジョジョの「世界の一巡」の元ネタらしいと聞いたことがあるが、そう考えるとこの言葉がちょっとプッチ神父の「覚悟は幸福」という言葉に通じるように思えてくる。
「つらいときも、苦しいときも、信じる人のそばにはいつも神がいてくださる」(デーケン氏)
中高の礼拝でもよく語られた「あしあと」という詩について。しかし『聖☆おにいさん』を読んでからというもの、この詩を読んでもどうにも文字Tにジーパン、スニーカーという出で立ちで砂浜をてくてく歩くイエスが思い浮かんでしまって…。
「人を愛するとは、『いとしい人よ、あなたは決して死ぬことはありません』と言うことだ」(ガブリエル・マルセル)
愛とは、相手の死後の生命を確信すること、だそう。好きな人の前で声に出して読みましょう。
「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(聖書)
探してたあの聖句その3。くよくよ悩みがちなときに効く一節。
「主よ、私にユーモアのセンスと、冗談を解する恵みをお与えください。人生においてささやかな喜びを見出し、それを人に伝えることができますように」(トマス・モア)
これをさらりと言えるトマス・モアのセンスが素晴らしい。本当に人生はユーモアあればこそ。
「自分の愚かさに気づいて笑うことができる人は、賢い人なのです」(デーケン氏)
人を笑う人ではなく、自分を笑える人になりたいものです。
「厳しい挫折とも思えることにも、必ず、計り知れない神の働きがあるのです」(デーケン氏)
挫折を味わったときに噛みしめたい一言。