まんざらでもない瞬間
感想:『心を癒やす言葉の花束』
上智大学名誉教授、アルフォンス・デーケン氏が、先人の残した40の名言について自らの体験を交えて語った本。
辛いとき癒やしをくれる言葉、迷ったときの道しるべになってくれる言葉、自分の心の弱さに気づかせてくれる言葉、そんな言葉たちが詰まった本。私はキリスト教主義の学校で教育を受けたので、カトリックの司祭でもあるデーケン氏のキリスト者らしい言葉に昔を思い出して懐かしさでいっぱいになった。
特に私の琴線に触れた言葉はこちら:
「わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを」(聖書)
「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」(聖書)
どちらも昔大好きだった聖書の一節。特に後者は「JINの『神は乗り越えられる試練しか与えない』って確か聖書が元ネタだったよな…私の思い違いかな…」とモヤモヤしていたので、この本で確認できて良かった。
「顔を隠すな、ぞんぶんに泣け、捌け口を鎖された悲しみが、うちに溢れれば、ついには胸も張裂けよう」(シェークスピア『マクベス』)
この言葉を、失恋した友人に贈ります。
「暗闇の中でも、小さくてもいいから、光を探しなさい」(デーケン氏のご両親)
「人は出会うすべての人から学ぶことができる。こうありたい姿と、こうありたくない姿と、だ」(デーケン氏のお父様)
どちらも含蓄のある言葉。さすがデーケン氏のご両親。絶望の淵に沈みそうなとき、嫌な奴に出会ってしまったとき、思い出すことだろう。
「相手のありのままを認めようとせず、相手に自分の理想を押しつけ、あれこれ条件を課すのは、依存心の表れであり、その人自身が自立していない証拠です」(デーケン氏)
その通り。親子関係にも恋愛にも適用できそうな言葉。
「『命令されたから』『みんながやっていたから』『法律だから』とは、責任ある大人の言葉ではない」(デーケン氏)
自分のしたことに言い逃れをするナチスの戦犯に対するデーケン氏の辛辣な言葉。デーケン氏の祖父はドイツが降伏した時に進駐してきた連合軍の兵士に射殺されているとか。当時を知る人の言葉は重い。
「驚きは哲学の始まり」(プラトン)
科学や哲学の核心を突いた、2400年経っても全く古さを感じさせない一言。「西洋哲学の歴史とはプラトンへの膨大な注釈である」と言われるのもむべなるかな。そういえば今読んでいる途中の『種の起源』も、元はといえば南米を旅したダーウィンの驚きから始まったものだった。
「自分の力だけではどうにもならないという限界を知ることは、真の人間的な強さに近づく第一歩」(デーケン氏)
中高の部活で山に登っていた頃、山に行くといつも人間の力は何てちっぽけなものだろうと感じていた。ちなみにその部では山に行くと毎回(合宿中は毎朝)礼拝をする習慣があり、それがクリスチャンの登山者の方との会話のきっかけになったこともあった。
「恐怖は、蛇や病気など何かはっきりした原因があって生じるものであり、一方不安は、漠然とした気分のようなつかみどころのないもの」(デーケン氏、元ネタはキルケゴール)
恐怖と不安の違いを見事に説明した一言。なるほど。
「お香典返しの代わりに、ホスピスに寄付したらいかがでしょう」(デーケン氏)
なるほど。いいアイデアかもしれませんが残された人たちが賛成するかどうかが問題で…。
「もし一人の人間によって少しでも多くの愛と平和、光と真実が世にもたらされたなら、その一生には意味があったのである」(アルフレート・デルプ神父)
私は人の生きる意味はこれなんじゃないかと思っている。
「自分を待っている仕事や愛する人間に対する責任を自覚した人間は、生きることから降りられない」(ヴィクトール・E・フランクル)
私も自分が死んだら彼氏の人生設計がめちゃくちゃになると考えたら死ねなくなった。
「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」(ニーチェ)
そういえばニーチェの「永劫回帰」の考え方がジョジョの「世界の一巡」の元ネタらしいと聞いたことがあるが、そう考えるとこの言葉がちょっとプッチ神父の「覚悟は幸福」という言葉に通じるように思えてくる。
「つらいときも、苦しいときも、信じる人のそばにはいつも神がいてくださる」(デーケン氏)
中高の礼拝でもよく語られた「あしあと」という詩について。しかし『聖☆おにいさん』を読んでからというもの、この詩を読んでもどうにも文字Tにジーパン、スニーカーという出で立ちで砂浜をてくてく歩くイエスが思い浮かんでしまって…。
「人を愛するとは、『いとしい人よ、あなたは決して死ぬことはありません』と言うことだ」(ガブリエル・マルセル)
愛とは、相手の死後の生命を確信すること、だそう。好きな人の前で声に出して読みましょう。
「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(聖書)
探してたあの聖句その3。くよくよ悩みがちなときに効く一節。
「主よ、私にユーモアのセンスと、冗談を解する恵みをお与えください。人生においてささやかな喜びを見出し、それを人に伝えることができますように」(トマス・モア)
これをさらりと言えるトマス・モアのセンスが素晴らしい。本当に人生はユーモアあればこそ。
「自分の愚かさに気づいて笑うことができる人は、賢い人なのです」(デーケン氏)
人を笑う人ではなく、自分を笑える人になりたいものです。
「厳しい挫折とも思えることにも、必ず、計り知れない神の働きがあるのです」(デーケン氏)
挫折を味わったときに噛みしめたい一言。

